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STORY 03 御菓子司 梅月 

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時代に合わせて、本当に美味しいものをつくる。3代目が追求する和菓子の味

つくば市にある御菓子司 梅月。本当に美味しい和菓子を日々追求し続ける3代目の店主・雨田さんにお話を伺いました。

 

3代にわたる和菓子の歴史

上郷地区の静かな通りに佇む一軒の和菓子屋。祖父が創業して、父から引き継ぎ、店主の雨田さんで3代目となります。雨田さんは、高校を卒業してすぐに東京の和菓子屋で3年間修業し、家業を継ぎました。

「父から継ぐのは昔から決まっていたわけじゃありませんでした。ただ、小学生の頃には『二郎カステラ』という看板商品もできていて。『二郎』という自分の名前がついているから、継ぐのは自分かなと思っていました」

小さい時から父が製造する姿を見ていたから、和菓子職人という道は馴染みやすく、全く違う道に進むのも想像ができなかった。
「やってみないと分からない」そんなチャレンジ精神で和菓子の道に足を踏み入れたのです。

 

父との修業、そして一人で全てを担う

東京の修行先から帰郷してからも修業は続きました。製造に慣れるまでの2・3年は父と一緒にあんこ炊きの技術をやりながら学び、その後、製造のすべてを一人で担当するように。

数年前、父が亡くなったのはコロナ禍のこと。それまでは、父が饅頭を包んだり成型したり、母が包装を担当するなど、3人での分業でしたが、そこから母と二人で協力して製造をしています。

 

時代に合わせて商品を変えていく

創業から今まで、常に同じ種類の商品を作ってきたわけではありませんでした。父の時代の商品は、今の倍の種類があったといいます。栗饅頭や桃山等の焼き菓子、饅頭の数々。
そして、10年ほど前に大きな決断をしたのです。

「実はお菓子が好きじゃありません。だから、自分が好きなもの、納得できるものだけを作ろうと思って、商品を半分に減らしました」

それは、単なる削減ではなく、新しい時代への適応でした。父の時代は、季節のお祝いものを売上の中心にしていたのかもしれません。でも今は、コロナにより冠婚葬祭は簡素なものになり、料亭向けの赤飯やおはぎが売れなくなりました。だから、本当に美味しいもので勝負していかないといけない時代に移り変わったといいます。

そこで父の代から人気商品だった大福を復活させることに決めました。生地が難しいんですが、売れるようになった。時代に合わせて、商品も変えていくんです」

 

「毎日、微調整する」——完成のない修業

 

見た目や商品名は同じでも、10年前のお菓子と比べると中身はガラッと変わっているといいます。
「甘さを控えめに、配合も変えました。でも、完成はしていない。合格ラインは自分で決められるからずっと修業のつもりです」
季節によって、製造段階で味、硬さ、甘さが変わります。冬と夏では、同じレシピでも微調整が必要になるのです。
日々真摯に製造に向き合うからこそ、少しの変化を感じ取る職人ならではの感覚が研ぎ澄まされていました。

 

本当に美味しいものをつくる 素材へのこだわり

 

どら焼きの皮とカステラに使う蜂蜜は、つくば市にある“沢辺茶屋園”から仕入れ、隠し味として入れています。
砂糖も種類によって舌触りや感覚が異なるため、複数の種類をそれぞれに適した御菓子に合わせて使い分けます。粒あんは北海道産の小豆を使い、自家製で製造しています。
こうした素材へのこだわりが、本当の美味しさを追求する一貫した姿勢に表れていました。

 

看板商品たちの誕生秘話

スイカ羊羹
父がつくば万博の際に、お土産用として作った商品です。富山での修業時代に学んだ技だといいます。第21回全国菓子大博覧会で金賞を受賞。1994年の茨城新聞にも記事が残っています。

二郎カステラ
二郎カステラは、沢辺茶屋園のハチミツと和三盆砂糖を使い、しっとりと仕上げています。
手づくりならではのしっとり食感で、卵の風味と優しい甘さが特徴です。そして粒の荒いザラメがアクセントになっています。

その他にも

酒粕羊羹
店主の雨田さんが考案した商品。酒粕は、つくば市内にある稲葉酒造のすてらの酒粕を使用しています。
「出来上がった完成度の高い商品を使う方が、いい商品ができるんじゃないか」という考え方から考案されました。

大福
生地がとても難しいという大福。あんことの食感をマッチングするため、毎日生地を調整をしています。
溶けてしまうほどに柔らかい生地に、生地とのバランスがいいこしあんだから何個でも食べられるような大福です。

どら焼き
どら焼きは、自家製の粒あんが入ったどら焼き、梅の甘露煮入りの白あんを使った梅どら、大きな栗が入った栗どらの3種類があります。
どら焼きの皮のみでの販売もしています。人気商品であるどら焼きの皮は、甘すぎないしっとりとした食感で、どら焼きの皮だけで食べても美味しいですが、ジャム等お好きなようにアレンジして食べるのもおすすめです。

形は昔ながらでも時代に合わせて変えていく。
作り込みを感じられるようになってほしいという思いを込めて日々御菓子を製造しています。

 

合格ラインを決めて、納得いく商品を出す

完成度への基準は、年を重ねるごとに厳しくなっていると語ります。
スーパーには機械で作ったきれいな商品が並んでいてその中での比較は避けられない。

だから合格ラインを決めて納得のいく商品しか店に並べません。

 

毎日がルーティン化、ミスを減らす工夫

 

現在、梅月の商品は市内の複数の直売所で販売されています。つくば駅にある「つくばの良い品」、「つくば市物産館」、「筑波ハム直売所 つくば陣屋」、「JAつくば市農産物直売所(四季の郷、桜)」の5店舗での販売を手がけています。
県外や市外には出さないといいます。「信頼がおけるところにしか置かない。自分の作ったものを置くから責任はある」と、手づくりならではの品質管理の難しさを語ります。

現在は朝早くから御菓子を作り始め、出来上がった御菓子を直売所などに配達をして、夕方には仕事が終わるというルーティン化された毎日です。毎日がルーティン化されているからミスが少ない。そのため、敢えて単純化された生産体制を守り、品質維持に努めています。

 

好きなものだけで、全力を尽くす―時代と向き合う和菓子職人の信念

 

「仕事って思うと嫌だなっておもう。好きなものだけで。嫌なことはやらない」と、シンプルに語る雨田さん。SNSの活用を勧められますが「自分がやりたくないことはやらない。自分の集中力が切れない数だけを作る。そうすると全力でいいものが作れる」と、一貫して自分のペースを守り続けています。

3代目としての責任についても「そこまで、重荷には感じていない。気楽にいこうと思っている」と、肩の力を抜いた返答。「本当にうまいもので勝負していかないと食っていけない時代」を自覚しています。

物価高騰の中でも「今はやったことに対して評価がつく。今のやり方で間違っていないのかなって思う」と、市場からの評価を信じ、日々の仕事に向き合っています。

手づくりのものが手に入りづらくなった時代だからこそ、職人が作る丁寧な手仕事による本当に美味しい菓子を求めて、ぜひ梅月へ。

 

取材先:御菓子司 梅月

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