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STORY 02 つくばブルワリー筑波山麓(株式会社ペブルス)
「地域の人に愛される、長く続く企業を作りたい」—— ビール造りに見つけた、地域づくりの実践
つくば市にある株式会社ペブルス。つくば発のブルワリーとして誕生してから6周年を迎えた同社の創業者・延時社長にお話しを伺いました。
ビールとの出会い——ビール事業の可能性
10代の時にインディーズ映画に魅了され、映像制作会社に就職し、26歳の時につくば市を拠点に独立。
延時社長は、長年の映像制作の経験を通じて、ある違和感を抱くようになったそうです。
「つくば市に会社があっても、つくば市の企業という感じがしない」
市内の仕事をすることはもちろんありましたが、取材等で日本全国、海外、色々な所に行くことも多く、何年経っても、“地域に根ざす企業“というイメージが湧かなかったのです。
取材先で出会う、地域に愛され、応援される企業たち。長く続く企業には共通点がありました。
衣食住に関わる仕事や地元のことをやっている企業。そういった企業は地元の横のつながりを大切にし、地元を盛り上げようとしていたのです。
いつしか自分も“地元の人と繋がり、応援され、愛される企業にしたい“そんな想いを抱くようになりました。
新しい事業への展開を模索をする中、訪れた転機は、Tsukuba Vineyard(つくばヴィンヤード)の高橋氏との出会いでした。市内の研究者でありながらワイナリーを営む姿に心を打たれたのです。
高橋氏の畑で友人たちと酒を飲みながら、同時に気づいたのは——
「つくばでは日本酒もワインも地元で造られているのに、ビールだけがない」
地元の農作物が使える。何世紀も続けられる事業。地元の企業とのつながり。日本酒やワインとのコラボレーション——ビール造りには無限の可能性が広がっていました。
つくば市では10年以上続くビアフェスもあり、“つくばならできる”。
そう確信し、2019年に事業化を決断。2020年にビジネスをスタートさせました。
映像制作とビール造り——ものづくりの共通点
ロゴもラベルも販促物の大部分は自ら手がけています。映像制作会社時代の経験があったからこそ自分たちの思いをそのまま形にする、的確なディレクションができるのが強みです。
ビール造りとの共通点は、デザインだけではありません。
ビール造りを映像制作として例えるなら——レシピ作りは構成や取材の準備。仕込みは撮影。タンク管理は編集作業。出荷はリリース。できたものをお客さんに届けて喜んでもらえる点では、ものづくりの本質は同じです。
目を輝かせながら話す姿にものづくりへの根源的な愛が伝わってきました。
「つくばでやる意味」——商品名に込めた想い
商品のラインナップを見ると、目を引く名前たち。「月水石HAZY IPA」「金色姫 IPA」——
これらは、筑波山に伝わる伝承や伝説からインスピレーションを得た名前です。
筑波山には伝承や伝説が多く、カジュアルなビールで伝説・伝承を風化させないようにしたら、名前だけでも残るのは面白いのではと考えました。
実際に店舗には研究者が訪れお客さん同士が交流したり、ビールの名前に関係する当事者との交流が生まれたりするなど、地域とのつながりが生まれています。
原材料選びに見る、「つくばでやる意味」
採用する素材は、麦芽はヨーロッパ産と茨城県産。茨城県産麦芽は契約農家から年間契約で仕入れ、メインで使用するホップはサンプルを取り寄せて選定し、ロット指定で1年分契約。水は筑波山の天然水。地元の素材をできるだけ入れて地域の味を楽しんでもらうことを大切にしています。
特に地元のものは「生産者の顔が見える人から買う」というこだわりがあります。
さらに、来年再来年には畑を整えて、年1回か2回は自分の畑でとれたホップを使用したビールを製造する計画をしているそうです。
自分たちの香りや味が消費者に意識してもらえるように原材料にこだわりをもつこと。それが、この場所でやる意味になる。
その意識や行動が“地域に根差すということにつながる“のだと、そこに延時社長の一貫した信念が表れていました。
失敗から学ぶ——試行錯誤の先のおいしさの秘訣
ビール造りをゼロから始めた延時社長は、最初の3年は美味しくできたビールでも同じ造り方をせずに、100回以上試作することを決めました。ホップやモルトの量や配分を微妙に変える、仕込みや発酵温度を変えるなどして結果的に150回以上の試行錯誤を重ねました。
その過程で、大切にしたのは——
ビール造りの先輩達のもとへ赴き、造ったビールを飲んでもらう。その時、求めるのは褒め言葉ではなく、忌憚のない批評です。
「悪い部分を指摘してくれる人を探すこと。『少しでも悪かったり足りない部分があれば何がいけなかったのか』を知ることを大切にしました」
「いいんじゃないっていう人は多いです。でも、上手くなってきていてもプロが気づく足りない部分。その部分を知り改善をしたかったので、ちゃんと悪いところを言ってくれる人を見つけて、徹底的に聞きました」
製造を始めて6年が経過し、自分達が目指すステージに近づいていく道筋が少しずつ見えてきました。
地元の素材を使い、自分達らしいビールを造ること。それが“おいしさの秘訣を深める”ということ。
試行錯誤する過程で見つけた、独自の製造哲学です。
筑波山麓での実践——地域との深い関わり
その想いを実践する場所が、筑波山麓の醸造所。洞峰公園前のお店から醸造部分を移転する形でオープンした店舗併設の醸造所です。
「いつか筑波山の麓で“筑波山の天然水を使ったビールを造りたい”と思っていて、この場所だから選びました」
「旧筑波山口駅の目の前、昔はすごく盛り上がっていたと聞いて、自分たちがまたこの地域でやることによって、周辺地域が盛り上げられたら面白いと思いました」
現在、延時社長は週6~7日、この地に通っています。
「筑波山周辺の人たちは、地域独自の文化や考え方を持っていると思います。地域特有の世界を知り、吸収する。それがビール造りのアイディアになる。地域を知るということが勉強になるんです」
「つながり」を生み出す場所へ
店舗には季節によって異なるビールが並びます。
アメリカンスタイルが多く、トロピカル系でほどよく苦く、アルコール度数が高い。軽いものから濃厚なものまで。それぞれにクラフトビールの良さ・色があり、常に6種類のビールが並ぶため、飲み比べする人も多くいます。
金色姫IPA
つくばコレクション、筑波山地域ジオブランド認定商品。
贅沢な金色の輝きが魅力。IPAの特徴であるフルーティーでホップの効いた香りと、豊かなコクが楽しめ、最初にグレープフルーツを感じ、それから桃やマンゴーのようなアロマがほのかに香る。
つくばサンライズラガー
筑波山の朝日をイメージした琥珀色の美しいラガービール。穀物のような香ばしさ、モルト香が豊かに広がるクラフトビールらしい味わい。THE!筑波山なお土産に最適。
「ビールをきっかけに久しぶりに筑波山に登った」
「つくばの自慢になった」
「子どもの20歳の誕生日に予約する」
つくばに訪れるきっかけになることや人生の節目に選んでもらえることが嬉しいのだそうです。
つくばの魅力を、世界へ
ビール造りの指標として大会にも参加しています。今年2月には、ジャパン・グレートビア・アワーズ2026で受賞。2024年、2025年に続く受賞で、インターナショナル・ビアーカップでも受賞しています。
来年からは、海外の大会にも挑戦し、より厳しい世界でクオリティを高めることに挑戦するそうです。
つくばのおさけ推進協議会の会長として、延時社長が語るつくばの魅力は——
– 日本酒、ワイン、クラフトビール、蒸留酒があり、どれもこだわっていておいしい
– おいしい料理を作る店が市内に点在している
– 休日に旅行感覚で市内を巡ることができる
「食事も楽しめて、酒も楽しめて、筑波山もある。それがつくばのいいところです。そして、魅力的な場所に出かけると知り合いも増えるし、自分の好きなものを見つけられるまち。そういった小さな魅力を発見できるまちだと思っています」
クラフトビールを通じて、地域の人と人をつなげ、地域の未来を作る。今日も“地域に愛される、長く続く企業を目指して”おいしいビール造りに奮闘しています。お気に入りの一杯を探しにぜひつくばブルワリー筑波山麓へ。
取材先:つくばブルワリー筑波山麓(株式会社ペブルス)















